蔭日向。
気ままに落書きや小説を書いたり萌え語りしています。詳細は『復活しました!』という最古記事に。リンクからオリジナル小説、ポケ擬人化のまとめ記事に飛べます。
ラビット・アドベンチャー 1
- 2012/02/20 (Mon)
- novel |
- CM(0) |
- Edit |
- ▲Top
空は薄らと明るくなりつつある。
世界を覗き始めた太陽は、そのほんのひとかけらから世界中に膨大な朝の日差しを浴びせかける。
今まで闇に包まれていた世界が、白い光に包まれて輝き始める。
そして、静かだった世界に鳥のさえずりや風の走る音がやってくる。
まるで、太陽は世界の目覚まし時計のようだ。
今日もまた、新しい1日が始まるのだ。
朝の日差しを受け輝く緑豊かな大地。
真ん中に一筋の茶色い線が走っている。
人々に踏み固められた土の道。
何処までも真っ直ぐ続くたった一本の道を、2人の少年が歩いていた。
Tシャツに青いジーンズという非常に地味で適当な服装をしており、大きな、いや、大きくなった茶色のリュックを背負っていた。
2人の服装はTシャツの色以外全く同じだった。
「眩しいな。」
白いTシャツを着た少年が言った。
背丈は高くも低くもなく、体格は細身だが、筋肉がしっかりとついている。
髪は短く、色は白に近い薄黄色。瞳の色は冬の空のような綺麗な水色だった。
「綺麗だな。」
黒いTシャツを着た少年が言った。
白Tシャツ少年とほとんど似たような体格をしているが、背丈はほんの少し高い。
髪はやや長めで、色はTシャツと良く似た黒。その瞳も髪とTシャツに似た黒だった。
「うん。凄く綺麗。何でだろう…。日の出なんて今まで何回も見てきたのに、こんなに綺麗だったなんて…。」
「そりゃー、俺達はこの朝をずっと楽しみにしてたからな!待ちわびた待ちわびたこの朝が、輝いて見えないなんてことあるわけないだろ!卯月!」
「そうだね。黒兎。思い切って出てきて良かった…。」
2人は太陽の光を浴びながら、ゆっくり南へと進んでいた。
時間は数日前。
「黒兎!黒兎!見てよこれ!」
卯月はやけにテンション高めに黒兎の家へとやって来た。
木の上で読書をしていた黒兎は、駆け込んできた卯月を見て顔をしかめた。
「どーした?突然………。さては俺に内緒で南の洞窟に入って宝物でも見つけたのか?許さないぞ!いつか一緒に行こうってお前が言ったじゃねぇか!約束を破るなんて最低だぞ卯月!そこに座れ!」
黒兎は持っていたやたら分厚い本を地面に投げ捨てて、座っていた木から飛び降りた。
「違うよ…。何でそうなるんだ。」
「違ったか。なら良い。で、一体どうしたんだ?」
「これ、家の掃除してたら見つけたんだ!」
「お前が掃除?明日は矢でも降るぞ。」
「正しくは、新菜に掃除をしろと凄く怖い顔で強要されて仕方なく、家の掃除をしてたら見つけたんだ。」
卯月はだらしない理由を述べながら地面に膝をつき、手に持っていたやたら大きくて埃に汚れた紙を地面に広げた。
「なるほどな。」
納得しながら黒兎も卯月と同じように地面に膝をついて紙を覗き込んだ。
その表情が楽しそうな顔から驚きに一瞬で変わった。
「………これ、あの時作った…地図?」
紙はヨレヨレでボロボロ。破れている箇所もちらほら。更に埃にまみれてかなり汚れていた。
が、辛うじて絵が描かれていると分かった。
紙いっぱいに大きな丸が描かれていた。
丸の中には簡単な木や草や山などのマークを中心に色分けされており、青く塗られた外には小さな波が散らばっていた。
「ちゃんと覚えてたんだ、黒兎。」
「当たり前だろ!お前は俺のことを何か勘違いしてる。」
「…3日前、黒兎にお金貸したよね?」
「え、そーだっけか…。ま、まぁ…また後で絶対返すから!そんなことより、この地図!懐かしいなぁ!」
「…絶対に返してね。うん。まだ残ってたなんて思いもしなかったよ。」
それは、卯月と黒兎が3年程前に作った地図だった。
今住んでいる大好きなこの島を地図にして残したいと言い出した卯月に黒兎が乗り、2人で島中を駆け回って描いたものだった。
しかし、その地図に描かれている島は半分も埋まっておらず、妙な空白が空いていた。
「確か、新菜に取り上げられたとか言ってなかったか?」
「よく覚えてないけど、あの後地図だけは返して貰ってたみたい。」
新菜は2人の幼なじみだ。
黒く長い髪に赤いリボンを付けた、明るく、少し気が強い少女で、黒兎とは言い争いや喧嘩が絶えない。
そんな新菜はある日突然、卯月から地図を取り上げて、もうこんなことは止めるようにと言ったのだった。
「何で止めさせられたんだっけか。」
「それは…よく覚えてる。地図を取り上げられる前日、僕達は夢中に成りすぎてうっかり崖から落ちたんだ。偶然、漁をしてたおじさんに助けてもらえたけど、下手したら深い海で溺れてたかもしれなかった。」
「あー…思い出した。それが新菜にばれて、もう危ないことすんなって怒られたなぁ…。」
「そう。もう冒険はしないでって…大泣きしながら。」
黒兎は卯月を横顔をちらりと見た。
眉を下げて何だか情けないといった顔をしていた。
「…ったく、俺は新菜なんか気にせずに続けようって言ったのに。」
黒兎の言葉に、卯月の体は少しだけぴくりと動き、顔は赤く染まっていく。
「だ、だって…。」
「あー、はいはい。卯月は新菜に甘いもんなぁ。…いや、弱いのか。」
「……………。」
黒兎は黙ってしまった卯月から、地図へと視線を戻した。
それからむやみやたらにすることはしなくなったけれど、面白そうな場所を見付けては、2人でこっそりと探検をしたりしている。
それが2人の日常で、趣味だった。
「でも、やっぱり勿体なかったよな。めちゃくちゃ楽しかったし。」
「…そうだね。この島って、まだまだ色んな秘密がある気がするんだ。」
「…なぁ、もう一回だけやってみようぜ。」
「……………。」
「この地図を見付けたのも、何かの機会だし。卯月の言う通り、この島はまだ秘密がたくさんある。それを見つけたい。」
「………多分、新菜は反対するよ?」
「内緒でするに決まってんだろ!」
「……………。」
「俺は決めた!近く決行する!この地図を完成させてやる!」
黒兎は言いながら地図を持って立ち上がり、ビシッと卯月を指差した。
「俺だけでもやってやるんだからな。」
漆黒の瞳が、空色の瞳を射ぬく。
全く異なる2つの瞳は、同じような輝きを見せている。
「黒兎だけじゃ、地図は完成させられないよ。」
言いながら卯月も立ち上がり、黒兎が持つ地図を指差した。
「黒兎は絵が下手なんだから。」
「うるせーよ!」
「…僕も行く。やっぱり大好きなこの島のことを隅々まで知り尽くしてみたい。」
そうして、2人は楽しそうに微笑んだのだった。
世界を覗き始めた太陽は、そのほんのひとかけらから世界中に膨大な朝の日差しを浴びせかける。
今まで闇に包まれていた世界が、白い光に包まれて輝き始める。
そして、静かだった世界に鳥のさえずりや風の走る音がやってくる。
まるで、太陽は世界の目覚まし時計のようだ。
今日もまた、新しい1日が始まるのだ。
朝の日差しを受け輝く緑豊かな大地。
真ん中に一筋の茶色い線が走っている。
人々に踏み固められた土の道。
何処までも真っ直ぐ続くたった一本の道を、2人の少年が歩いていた。
Tシャツに青いジーンズという非常に地味で適当な服装をしており、大きな、いや、大きくなった茶色のリュックを背負っていた。
2人の服装はTシャツの色以外全く同じだった。
「眩しいな。」
白いTシャツを着た少年が言った。
背丈は高くも低くもなく、体格は細身だが、筋肉がしっかりとついている。
髪は短く、色は白に近い薄黄色。瞳の色は冬の空のような綺麗な水色だった。
「綺麗だな。」
黒いTシャツを着た少年が言った。
白Tシャツ少年とほとんど似たような体格をしているが、背丈はほんの少し高い。
髪はやや長めで、色はTシャツと良く似た黒。その瞳も髪とTシャツに似た黒だった。
「うん。凄く綺麗。何でだろう…。日の出なんて今まで何回も見てきたのに、こんなに綺麗だったなんて…。」
「そりゃー、俺達はこの朝をずっと楽しみにしてたからな!待ちわびた待ちわびたこの朝が、輝いて見えないなんてことあるわけないだろ!卯月!」
「そうだね。黒兎。思い切って出てきて良かった…。」
2人は太陽の光を浴びながら、ゆっくり南へと進んでいた。
時間は数日前。
「黒兎!黒兎!見てよこれ!」
卯月はやけにテンション高めに黒兎の家へとやって来た。
木の上で読書をしていた黒兎は、駆け込んできた卯月を見て顔をしかめた。
「どーした?突然………。さては俺に内緒で南の洞窟に入って宝物でも見つけたのか?許さないぞ!いつか一緒に行こうってお前が言ったじゃねぇか!約束を破るなんて最低だぞ卯月!そこに座れ!」
黒兎は持っていたやたら分厚い本を地面に投げ捨てて、座っていた木から飛び降りた。
「違うよ…。何でそうなるんだ。」
「違ったか。なら良い。で、一体どうしたんだ?」
「これ、家の掃除してたら見つけたんだ!」
「お前が掃除?明日は矢でも降るぞ。」
「正しくは、新菜に掃除をしろと凄く怖い顔で強要されて仕方なく、家の掃除をしてたら見つけたんだ。」
卯月はだらしない理由を述べながら地面に膝をつき、手に持っていたやたら大きくて埃に汚れた紙を地面に広げた。
「なるほどな。」
納得しながら黒兎も卯月と同じように地面に膝をついて紙を覗き込んだ。
その表情が楽しそうな顔から驚きに一瞬で変わった。
「………これ、あの時作った…地図?」
紙はヨレヨレでボロボロ。破れている箇所もちらほら。更に埃にまみれてかなり汚れていた。
が、辛うじて絵が描かれていると分かった。
紙いっぱいに大きな丸が描かれていた。
丸の中には簡単な木や草や山などのマークを中心に色分けされており、青く塗られた外には小さな波が散らばっていた。
「ちゃんと覚えてたんだ、黒兎。」
「当たり前だろ!お前は俺のことを何か勘違いしてる。」
「…3日前、黒兎にお金貸したよね?」
「え、そーだっけか…。ま、まぁ…また後で絶対返すから!そんなことより、この地図!懐かしいなぁ!」
「…絶対に返してね。うん。まだ残ってたなんて思いもしなかったよ。」
それは、卯月と黒兎が3年程前に作った地図だった。
今住んでいる大好きなこの島を地図にして残したいと言い出した卯月に黒兎が乗り、2人で島中を駆け回って描いたものだった。
しかし、その地図に描かれている島は半分も埋まっておらず、妙な空白が空いていた。
「確か、新菜に取り上げられたとか言ってなかったか?」
「よく覚えてないけど、あの後地図だけは返して貰ってたみたい。」
新菜は2人の幼なじみだ。
黒く長い髪に赤いリボンを付けた、明るく、少し気が強い少女で、黒兎とは言い争いや喧嘩が絶えない。
そんな新菜はある日突然、卯月から地図を取り上げて、もうこんなことは止めるようにと言ったのだった。
「何で止めさせられたんだっけか。」
「それは…よく覚えてる。地図を取り上げられる前日、僕達は夢中に成りすぎてうっかり崖から落ちたんだ。偶然、漁をしてたおじさんに助けてもらえたけど、下手したら深い海で溺れてたかもしれなかった。」
「あー…思い出した。それが新菜にばれて、もう危ないことすんなって怒られたなぁ…。」
「そう。もう冒険はしないでって…大泣きしながら。」
黒兎は卯月を横顔をちらりと見た。
眉を下げて何だか情けないといった顔をしていた。
「…ったく、俺は新菜なんか気にせずに続けようって言ったのに。」
黒兎の言葉に、卯月の体は少しだけぴくりと動き、顔は赤く染まっていく。
「だ、だって…。」
「あー、はいはい。卯月は新菜に甘いもんなぁ。…いや、弱いのか。」
「……………。」
黒兎は黙ってしまった卯月から、地図へと視線を戻した。
それからむやみやたらにすることはしなくなったけれど、面白そうな場所を見付けては、2人でこっそりと探検をしたりしている。
それが2人の日常で、趣味だった。
「でも、やっぱり勿体なかったよな。めちゃくちゃ楽しかったし。」
「…そうだね。この島って、まだまだ色んな秘密がある気がするんだ。」
「…なぁ、もう一回だけやってみようぜ。」
「……………。」
「この地図を見付けたのも、何かの機会だし。卯月の言う通り、この島はまだ秘密がたくさんある。それを見つけたい。」
「………多分、新菜は反対するよ?」
「内緒でするに決まってんだろ!」
「……………。」
「俺は決めた!近く決行する!この地図を完成させてやる!」
黒兎は言いながら地図を持って立ち上がり、ビシッと卯月を指差した。
「俺だけでもやってやるんだからな。」
漆黒の瞳が、空色の瞳を射ぬく。
全く異なる2つの瞳は、同じような輝きを見せている。
「黒兎だけじゃ、地図は完成させられないよ。」
言いながら卯月も立ち上がり、黒兎が持つ地図を指差した。
「黒兎は絵が下手なんだから。」
「うるせーよ!」
「…僕も行く。やっぱり大好きなこの島のことを隅々まで知り尽くしてみたい。」
そうして、2人は楽しそうに微笑んだのだった。
PR
カレンダー
フリーエリア
最新コメント
[04/02 日蔭]
[04/02 クロウサギ]
[02/21 日蔭]
[02/21 ぬい華]
[12/22 クロウサギ]
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
日蔭
性別:
女性
自己紹介:
毎日のんびりマイペースに過ごす学生です。
ポケモン、APH、キノの旅、牧場物語、ゼルダの伝説など大好物増殖中。
基本的にキャラ単体萌え。かっこかわいい方に非常に弱い。女の子ならボーイッシュな子がクリティカルヒット。カプに関してはノマカプ萌えですがたまに腐るかもしれない。
現在6つのオリジナル小説を亀更新中。書きたいのいっぱいありすぎてどれも手が回ってない。
絶賛ポケ擬人化再熱中!!デザインが来い。
ポケモン、APH、キノの旅、牧場物語、ゼルダの伝説など大好物増殖中。
基本的にキャラ単体萌え。かっこかわいい方に非常に弱い。女の子ならボーイッシュな子がクリティカルヒット。カプに関してはノマカプ萌えですがたまに腐るかもしれない。
現在6つのオリジナル小説を亀更新中。書きたいのいっぱいありすぎてどれも手が回ってない。
絶賛ポケ擬人化再熱中!!デザインが来い。
この記事へのコメント