蔭日向。
気ままに落書きや小説を書いたり萌え語りしています。詳細は『復活しました!』という最古記事に。リンクからオリジナル小説、ポケ擬人化のまとめ記事に飛べます。
ラビット・アドベンチャー 3
- 2012/03/11 (Sun)
- novel |
- CM(0) |
- Edit |
- ▲Top
「あら、新菜ちゃん。今日は。」
新菜に話し掛けたのは恰幅の良い服屋のおばさんだった。
新菜だけでなく、卯月や黒兎とも知り合いで、この島では珍しい子供である3人を可愛がってくれている。
「今日は!おばさんも買い物ですか?」
「そうよ。今日の昼食は美味しい魚が食べたいと思って。」
そうなんですか、と相槌をうった後、新菜は気になっていたことをおばさんに聞いてみることにした。
「……あの、今日卯月と黒兎見てませんか?」
「卯月くんと黒兎くん?今日は見てないわねぇ。」
「そうですか。2人とも朝から家にいなかったので。」
「あらあら。それで新菜ちゃんは少し元気が無かったのね。」
「え?」
「ふふふ。新菜ちゃんは隠してたみたいだけど、おばさんには分かっちゃうわよ!今日は一緒にお昼ご飯食べましょう。そうと決まればもっと食材買わないと。」
「あ、そんな、大丈夫ですよ!」
歩き出そうとしたおばさんを新菜は慌てて引き止めた。
すると、おばさんは優しく笑った。
「新菜ちゃんが元気ないと、皆心配しちゃうわよ。」
歩き出したおばさんに聞こえないように、新菜は呟いた。
「…まだまだだなぁ。」
その表情は、少し幸せそうだった。
そこはとても暗い森だった。
昼近くだというのに、高い木々が青い空を隠して、下まで光が殆ど届かない。
地面は常に湿っており、まるで沼のように足を捕られる。
地面に生える植物は、光が届かなくても生きていける、強い者達。
空気は梅雨の時期のように、一年中じめじめと暑苦しい。
『黒の森』。それがこの森の愛称だ。
「歩きにくい…。」
「暑い…。」
卯月と黒兎が同時にぼやいた。
2人とも似たようなジーンズの裾を折り、落ちてこないように留めており、履き古したスニーカーは勿論、足首から下は泥まみれだった。
卯月は手にカンテラを持ち、黒兎はコンパスを首から下げている。
2人は沈む足を必死に引き抜きながら、一歩一歩とてもゆっくりと進んでいた。
「さすがに『黒の森』って感じだね…。」
「全くだ…。こんなとこにくる奴は相当な阿呆か物好きだな。」
「僕達のことじゃんか…。」
この森には道が存在しない。
誰も入らないというのもあるが、地面の状態がとてつもなく悪いという理由の方が大きい。
カンテラがあるとはいえ、せいぜい足元を照らすのが精一杯。
それでも、巨大な身長を支える巨大な木の根に足を引っ掛け転倒、ということは防げる。
2人はコンパスで方角を確認しながら、暗い道なき道をひたすら全力で歩き続ける。
「もうかれこれ1時間は経つぞ…。」
「………まだ、1時間なのか…。あと何時間歩けばこの森を抜けられるんだろう…。」
「…あと、3時間くらいか?」
「僕は…4時間だと思う。」
「よっしゃ…。賭けようぜ。」
「………こんなところで何を…?」
「そうだな……。今日の夕飯…とか?」
「…多分、この森を抜けたときはヘロヘロだろうから…、非常食になると思うよ…。」
「ま…、その時に考えるってことで。じゃ…決まりだな!」
黒兎はいきなり元気になって、気合いで卯月を通り越した。
すれ違う際に卯月が持っていたカンテラを奪い取って、ずんずん進んでいく。
「あ、ちょっと…!」
「このまま自分のペースに合わせて賭けに勝とうなんて、そうはいかないぜ!」
そんな2人を見ている姿があることに、2人は全く気が付いていなかった。
新菜に話し掛けたのは恰幅の良い服屋のおばさんだった。
新菜だけでなく、卯月や黒兎とも知り合いで、この島では珍しい子供である3人を可愛がってくれている。
「今日は!おばさんも買い物ですか?」
「そうよ。今日の昼食は美味しい魚が食べたいと思って。」
そうなんですか、と相槌をうった後、新菜は気になっていたことをおばさんに聞いてみることにした。
「……あの、今日卯月と黒兎見てませんか?」
「卯月くんと黒兎くん?今日は見てないわねぇ。」
「そうですか。2人とも朝から家にいなかったので。」
「あらあら。それで新菜ちゃんは少し元気が無かったのね。」
「え?」
「ふふふ。新菜ちゃんは隠してたみたいだけど、おばさんには分かっちゃうわよ!今日は一緒にお昼ご飯食べましょう。そうと決まればもっと食材買わないと。」
「あ、そんな、大丈夫ですよ!」
歩き出そうとしたおばさんを新菜は慌てて引き止めた。
すると、おばさんは優しく笑った。
「新菜ちゃんが元気ないと、皆心配しちゃうわよ。」
歩き出したおばさんに聞こえないように、新菜は呟いた。
「…まだまだだなぁ。」
その表情は、少し幸せそうだった。
そこはとても暗い森だった。
昼近くだというのに、高い木々が青い空を隠して、下まで光が殆ど届かない。
地面は常に湿っており、まるで沼のように足を捕られる。
地面に生える植物は、光が届かなくても生きていける、強い者達。
空気は梅雨の時期のように、一年中じめじめと暑苦しい。
『黒の森』。それがこの森の愛称だ。
「歩きにくい…。」
「暑い…。」
卯月と黒兎が同時にぼやいた。
2人とも似たようなジーンズの裾を折り、落ちてこないように留めており、履き古したスニーカーは勿論、足首から下は泥まみれだった。
卯月は手にカンテラを持ち、黒兎はコンパスを首から下げている。
2人は沈む足を必死に引き抜きながら、一歩一歩とてもゆっくりと進んでいた。
「さすがに『黒の森』って感じだね…。」
「全くだ…。こんなとこにくる奴は相当な阿呆か物好きだな。」
「僕達のことじゃんか…。」
この森には道が存在しない。
誰も入らないというのもあるが、地面の状態がとてつもなく悪いという理由の方が大きい。
カンテラがあるとはいえ、せいぜい足元を照らすのが精一杯。
それでも、巨大な身長を支える巨大な木の根に足を引っ掛け転倒、ということは防げる。
2人はコンパスで方角を確認しながら、暗い道なき道をひたすら全力で歩き続ける。
「もうかれこれ1時間は経つぞ…。」
「………まだ、1時間なのか…。あと何時間歩けばこの森を抜けられるんだろう…。」
「…あと、3時間くらいか?」
「僕は…4時間だと思う。」
「よっしゃ…。賭けようぜ。」
「………こんなところで何を…?」
「そうだな……。今日の夕飯…とか?」
「…多分、この森を抜けたときはヘロヘロだろうから…、非常食になると思うよ…。」
「ま…、その時に考えるってことで。じゃ…決まりだな!」
黒兎はいきなり元気になって、気合いで卯月を通り越した。
すれ違う際に卯月が持っていたカンテラを奪い取って、ずんずん進んでいく。
「あ、ちょっと…!」
「このまま自分のペースに合わせて賭けに勝とうなんて、そうはいかないぜ!」
そんな2人を見ている姿があることに、2人は全く気が付いていなかった。
PR
カレンダー
フリーエリア
最新コメント
[04/02 日蔭]
[04/02 クロウサギ]
[02/21 日蔭]
[02/21 ぬい華]
[12/22 クロウサギ]
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
日蔭
性別:
女性
自己紹介:
毎日のんびりマイペースに過ごす学生です。
ポケモン、APH、キノの旅、牧場物語、ゼルダの伝説など大好物増殖中。
基本的にキャラ単体萌え。かっこかわいい方に非常に弱い。女の子ならボーイッシュな子がクリティカルヒット。カプに関してはノマカプ萌えですがたまに腐るかもしれない。
現在6つのオリジナル小説を亀更新中。書きたいのいっぱいありすぎてどれも手が回ってない。
絶賛ポケ擬人化再熱中!!デザインが来い。
ポケモン、APH、キノの旅、牧場物語、ゼルダの伝説など大好物増殖中。
基本的にキャラ単体萌え。かっこかわいい方に非常に弱い。女の子ならボーイッシュな子がクリティカルヒット。カプに関してはノマカプ萌えですがたまに腐るかもしれない。
現在6つのオリジナル小説を亀更新中。書きたいのいっぱいありすぎてどれも手が回ってない。
絶賛ポケ擬人化再熱中!!デザインが来い。
この記事へのコメント