蔭日向。
気ままに落書きや小説を書いたり萌え語りしています。詳細は『復活しました!』という最古記事に。リンクからオリジナル小説、ポケ擬人化のまとめ記事に飛べます。
10DAY's Limit 5
いつからだろう。こんな気持ちになったのは。
貴方の笑顔が忘れられないよ。
貴方の温もりが忘れられないよ。
貴方の強い想いが忘れられないよ。
なのに、どうして。
どうして、貴方は思い出してくれないの?
その女の子はお世辞抜きにとても可愛い女の子だった。
肩より少し長めの茶色の髪。手提げ鞄を持つ腕も、赤黒チェックのスカートから伸びる脚も、細くてかなりの色白だ。同じように美白の顔には大きな黒い瞳。その瞳は真っ直ぐ俺を見つめている。
「こいつ……。」
死神は俺以上に彼女の登場に驚き戸惑っている。
「だ、誰…?」
俺は少し緊張しながら彼女に問い掛けた。
「私は如月悠(きさらぎはるか)。宜しくね、幽霊さん。」
彼女は誰が見ても可憐な笑顔を見せてくれた。
「…………。」
うっかり見惚れかけていたが、ふと大変なことに気が付いた。
「…ゆ、幽霊……!?」
俺、いつの間に幽霊になって…!まだ死んでないんじゃなかったのかよ!いや、記憶無くして意識だけが彷徨ってるから幽霊なのか!?
「ちょ、ちょっと待っ…!ええ!?俺っ…!」
慌てて自分の身体を見渡しても、首から変な砂時計が下がっている以外、特に変わったところはないように思える。頭の上にも手をやってみたが、天使の輪的なものも無さそうだ。何で彼女は俺が幽霊だって分かったんだろう。
「……ん?…え、っと、如月さんは幽霊が見えるのか…?」
「うん。珍しいのかな。やっぱり。」
「そ、そりゃ…普通は見えないだろ…。」
「そっか…。」
少し悲しそうな顔をされてしまった。悪い事を言ってしまったようだ。えっと…どうしたら…。
「あなた達は?」
「…え?こ、こいつも見えてるの?」
俺は隣でさっきから大人しくなってしまった死神を指差した。
「うん。小さくて可愛いね。幽霊くんの友達?」
「違います。」
俺は即答した。
「ちょっといいか?」
死神が如月さんに問い掛ける。
「なぁに?小さな幽霊さん。」
「オレは幽霊じゃねぇよ!!…お前、こいつに見覚えとかねぇか?」
「え?」
「いきなり何言ってるんだよ…。知ってるわけないだろ。初めて会ったんだから。」
「こいつは記憶を無くして困ってんだ。よく似た奴とかでもいいぞ。せっかくだし助けてやってくれねぇ?」
あ、俺は記憶がないから初めて会ったと思うだけかもしれないしな。というかこのゲームは普通の人間を利用していいのか。幽霊が見えてしまうあたり、普通の子じゃないかもだけど。
「………。ごめんなさい。分からないです。」
「こいつはこの辺でくたばりやがったんだ。最近近くで事故とか事件とか…そういうのはあったかぁ?」
まだくたばってないと文句を言いたいが堪える。死神が(多分)情報を集めようとしているんだから邪魔はしないでおこう。
「私………。」
如月さんは困ったように黙り込んでしまった。何だか辛そうだった。
「なぁ、もういいだろ。」
俺は死神にそう言った。これ以上如月さんを困らせてしまうのはよくない。只でさえさっき少し悲しい顔をさせてしまったし。それに、俺の問題に彼女を巻き込むのもよくないと思う。
「何言ってんだよ。10日間しかないんだぞ?幽霊と会話できちまう珍しい人間に出会えたんだし出来るだけ話を聞いときゃいいだろが。利用出来る奴は利用する。」
「お前…最低だな。」
「んだと!?このオレが誰の為にやってやってんだと思ってんだぁ!!」
「お前の為だろ。」
「………あ、あの…。」
言い合っていると申し訳なさそうに如月さんが入ってきた。俺と死神が同時に彼女を見る。
「………私、記憶がないんです。」
「「………え?」」
その言葉に俺と死神は声を合わせて驚いた。
「私は数日間…この辺りで事故に巻き込まれたそうです。奇跡的にどこも怪我はしませんでした。でも…事故のショックで一部の記憶を失ってしまったそうです。」
「……………。」
俺は黙って如月さんの話を聞くしか無かった。
「ふーん……。」
死神はニヤニヤと笑っていた。人の不幸話を聞いて笑うなんて、やっぱり最低な奴だ。
「じゃあちょうどいいじゃねぇか。」
「「え?」」
今度は俺と如月さんが声を合わせる。
「お前、オレらに協力しろ。」
「えっ?」
「はぁ!?何言ってんだ!!」
「いいじゃねぇか。お前はこいつに協力してやれよ。」
「「…………。」」
俺と如月さんは同時に視線を合わせた。
「記憶を無くした同士、お似合いじゃねぇか。仲良くしようぜ?」
死神の嬉しそうな声。
「………えっと…。」
如月さんの困った声。
「……………。」
俺はどうすればいい。
俺は何をすればいい。
俺は―――
「俺は…伝えなきゃ…。」
「っ!!」
今、何か。
「あ、あの…。」
「…おい、どうした?」
如月さんと死神が俺を心配そうに見ていた。
「今………。」
「!!思い出したか!」
「いや………。」
「何だよ!!」
何だったんだろう。さっきの。
一瞬、脳の奥底から何かが溢れだしたような感じがした。
強い、熱い、何かが。
「………如月さん…。」
「は、はい…。」
僅かな可能性にかけてみるのも、悪くない。
「…これから、宜しく。」
俺が微笑んでみせると、彼女も嬉しそうに笑ってくれた。
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HN:
日蔭
性別:
女性
自己紹介:
毎日のんびりマイペースに過ごす学生です。
ポケモン、APH、キノの旅、牧場物語、ゼルダの伝説など大好物増殖中。
基本的にキャラ単体萌え。かっこかわいい方に非常に弱い。女の子ならボーイッシュな子がクリティカルヒット。カプに関してはノマカプ萌えですがたまに腐るかもしれない。
現在6つのオリジナル小説を亀更新中。書きたいのいっぱいありすぎてどれも手が回ってない。
絶賛ポケ擬人化再熱中!!デザインが来い。
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