蔭日向。
気ままに落書きや小説を書いたり萌え語りしています。詳細は『復活しました!』という最古記事に。リンクからオリジナル小説、ポケ擬人化のまとめ記事に飛べます。
10DAY's Limit 4
「可哀想なお前にチャンスを与えてやるよ。」
死神の言葉に俺は面食らった。何だそれ。
「チャンス………?」
「一回だけだ。それ以上はねぇ。」
「一回だけ…。」
「死ぬか生きられるかはお前次第。やるかやらないかもお前次第。さぁ、どうすんだぁ?」
「どうせ、このままだと俺は死ぬんだろ?」
「そうだな。1人で何日も彷徨って変なことになったらこっちが迷惑だしなぁ。」
でも悪い気はしない。もう、迷ったりなんかするもんか。
「いいだろう。何だってやるさ。」
俺は死神と同じようにニヤリと笑ってみせた。
「…わかったよ。覚悟も可能性もあるみてぇだし…。よーっしゃ!!今すぐ行くぞ!」
「行くって、何処へ?」
「そんなもん決まってんだろ!『この世』だよ。」
そう言うと死神はいきなり俺の胸ぐらを掴んだ。
「なっ…。」
何すんだと言おうとした俺の言葉は、死神の声に消された。
「ゲームスタートだ!!」
そのまま死神に引きずり倒された次の瞬間、
世界が白くなる。
目の前に見えたのは巨大な砂時計。
真っ白な世界と同化した白い砂時計だ。
砂時計がゆっくりと回転する。
上下逆さまになった、その時、
「うわぁ!!」
俺の身体は急に下へと落ちていく。
何だこれ!今まで地面あったのに…!
「おおお落ちるうううう!!!」
白い世界をひたすら落ちていく。
「うるせぇぞ!」
横を見ると、目付きの悪い黒い死神が俺に並走するように仲良く落ちていた。
「なななな何だよ!これはぁっ!!何しやがったあああ!!」
「うるせぇっつてんだろ!黙ってろ!」
「無理だろおおおっ!!」
必死に手足を動かすものの、まるで意味がない。というか、このままだと死ぬんじゃ…!
「うわああああっ!!!」
その時、白い世界が輝いた。
白い世界でより一層白く輝く、丸い穴が見えてきた。
まるで太陽だ。
眩しすぎる太陽に向かって真っ直ぐ落ちていく。
あまりの眩しさと恐怖に耐えかねて俺は目を瞑った。
だが目を瞑っていても、俺が太陽に突っ込んでいくのが分かった。
「いてっ。」
ガサッとかいう大きな音がした。どうやら何かにぶつかったみたいだ。
「何だよ…。」
俺は恐る恐る目を開いた。目の前に見えたのは鮮やかな緑色。大量の葉っぱだった。
「えっ…。」
俺は顔を勢いよく上げた。
目に見えたのは、とある住宅路だった。電柱と木と電灯が規則的に並ぶ。そんなに広くなく、車が一台通れるくらいの道路。道路の両脇には同じような形の家々が並んでいる。
「……………。」
俺はただただその風景を木の上から眺めていた。
「おい!」
「わっ!」
突然何者かに耳元で叫ばれた。けどこの声は今まで散々聞いてきた、あの死神の声だった。
「何だよ…。………え?」
顔を横に向けて俺は固まった。
殴った挙げ句、散々罵声を吐いてきた黒い死神。相変わらず妙な姿なのは変わっていないが、今の死神は小さくなっていた。手の平くらいか?まるで小人だ。小人なんか見たことない………と思うけど。
「ぼけーっとしてんじゃねぇぞ!」
口も相変わらず悪いし、目付きも悪い。でもこんな小人サイズだとちょっと可愛く見えてしまう。
「何だよ、その変なもん見るような目は。」
「…いや、だって、それ…。」
「そりゃでかいと目立っちまうからなぁ。オレは嫌だけどな。こんな格好。てめぇのせいだぞ!」
「何で俺のせいなんだよ!」
「てめぇがふらふら彷徨ったりしてっからじゃねぇか!」
「好きで彷徨った訳じゃない!………分かんないけど。」
ふと死神は真剣な表情を見せた。
「まだ何も思い出してねぇのか…。何か見覚えねぇのか?」
「え?」
「この景色だよ。ここは、お前がそんな姿になっちまったちょい前の場所のはずだ。」
「そうなの!?」
俺は慌てて再び周りを見渡した。けど、何にも思い出せない。ここ何処だ。
「…………。」
「なぁんにも分かんねぇのかよ。ったく…。」
そんなこと言われても思い出せないものは思い出せない。
「なぁ、さっきの何なんだ?でっかい砂時計が見えたと思ったら急に落っこちたし…。大体ゲームって何だよ。チャンスってそのゲームだよな。というか俺何したらいいんだよ。何で急にこんなとこに来たんだよ。しかも何でお前まで落ちてそんなチビになってんだよ。それに…。」
「あーーー!!!一気に尋ねんなぁ!ったく面倒くっせぇなぁ!」
だって訳が分からないことばっかりだし仕方ないだろう。そもそも俺は『チャンス』をやると言っただけで何も説明を受けていない。結局俺が何をしたらいいのかまだ分かっていない。
「…俺は、何をすればいいんだ?」
取り敢えず一番重要なこと(多分)から聞いてみよう。死神はニヤリと笑い、言った。
「これから10日間で記憶を取り戻す。」
「は?」
「こ、れ、か、」
「いや、聞こえなかった訳じゃないから。」
「何だよ。ちなみに10日間で思い出せなかったら『あの世』行きだからな。」
「はぁ!?」
「その砂時計がゲームの残り時間だ。」
死神が指差した俺の胸元には、首から下げられた白い砂時計があった。先程見た巨大な砂時計にそっくりだが、砂時計の砂は血のような赤色だった。砂は少しずつ落ちて、既に小さな血の水溜まりを作っていた。
「さっき通ってきたのは『この世』と『あの世』を繋ぐトンネルみたいなもんだ。で、『あの世』から一番近い場所、つまりお前が死んだ場所に戻ってきたんだ。」
「まだ死んでない!」
「同じようなもんだろうが。で、俺はお前のサポートでついて来なきゃいけなくなった。見張りもあるけどな。ったく。」
「お前がぁ…?」
「オレだって嫌だよ!!てめぇふざけんなよ!いいか!さっさと思い出しやがれ!そうしてもらわねぇとオレも仕事終わんねぇだろ!」
死神がギャーギャー騒いでいるのを逆切れかよとか思いながら聞いていたとき。
「今日は。」
突然誰かに話し掛けられた。
「っ……!?」
俺より先に死神が驚いて声の主を見た。
「え………?」
つられて俺も視線を下へと落とした。
「今日は。幽霊さん。木の上で何をしているの?」
そこにいたのは、1人の女の子だった。
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HN:
日蔭
性別:
女性
自己紹介:
毎日のんびりマイペースに過ごす学生です。
ポケモン、APH、キノの旅、牧場物語、ゼルダの伝説など大好物増殖中。
基本的にキャラ単体萌え。かっこかわいい方に非常に弱い。女の子ならボーイッシュな子がクリティカルヒット。カプに関してはノマカプ萌えですがたまに腐るかもしれない。
現在6つのオリジナル小説を亀更新中。書きたいのいっぱいありすぎてどれも手が回ってない。
絶賛ポケ擬人化再熱中!!デザインが来い。
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