蔭日向。
気ままに落書きや小説を書いたり萌え語りしています。詳細は『復活しました!』という最古記事に。リンクからオリジナル小説、ポケ擬人化のまとめ記事に飛べます。
空青 2
- 2012/11/20 (Tue)
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「何が『またね』だよ…。」
青年は1人で道を歩いていた。
「また会うかどうかも分からないのに。」
考えるのは、先程の奇妙な少女との出会い。
少女のとても綺麗な瞳が、嫌に頭に残っていた。
「…子供か。まだ何も知らない。」
これからあの綺麗な瞳も、下らない世界のせいで薄汚れて、光らなくなっていくんだろう。
それにしても、あんな何もない所に子供が1人なんて危険過ぎる。
「…ま、もう二度と関わることなんてないだろう。」
世界は広い。広過ぎて全てが下らない。
もうこの世界に、何か思うことも、思い残すことも、何もない。
汚れていく世界に、自分に、見て見ぬふりをしていく。
そう生きていくと、決めた。
「もう生きていけなくても、構わないけどな。」
人間いつかは死ぬのだから。
その時がやって来たときは、もう逆らったりしない。
今までは散々足掻いてきたその時を、今は淡々と待つだけなのだ。
「…綺麗な空だな。」
青過ぎる空が、世界にずっと広がっていた。
賑やかな町だった。
広い大通りにはたくさんの人がいる。
両端にはたくさんの店が並び、店主らしき人々が大声で道行く人々を呼び止める。
楽しそうに立ち話をする大人達や、真剣に買い物をする大人達。
大人の側で大人しくする子供達や、大人の隙間をはしゃぎながら走り抜ける子供達。
その中を1人の青年が歩いていた。
金色の髪と、薄い灰色の瞳をしている。
身体を長いコートで覆っていて、後ろから見ると短い金髪とコートと革靴しか見えない。
コートの袖に手を通すことはせず首の部分だけを止めて、コートをマントのように羽織っていた。
コートの下には鎧服を着ており、腰に長い剣を差していた。
小さな布鞄を背負うように持っているが、コートに隠れて後ろからは見えない。
先程、丘で1人寝転んでいて、突然少女に起こされて、またねと言われた青年だった。
「活気があって良い町だ。今日は此処に泊まろう。」
人々の笑顔を眺めながら、青年は宿を探すことにした。
宿を探して町を歩いていると、ある店の前に何やら人だかりができていた。
どうやら大変繁盛しているという訳ではなく、何か問題でもあったらしい。
青年に首を突っ込む気はなかったが、何となく近付いて話を伺ってみた。
「お嬢ちゃん、いい加減商売の邪魔だよ。買う気がないなら何処かに行ってくれ。」
その店にはたくさんの檻が並んでいた。
檻の大きさは大小様々だが、檻の中には色鮮やかな鳥達が一羽ずつ入れられていた。
どうやらこの辺りに生息する、色の綺麗な鳥達を捕まえて、ペットとして売っている店らしい。
「でも、みんな、こまってるよ。」
聞いたことのある言葉に、青年はぴくりと反応した。
「だから、何でお嬢ちゃんにそんなことが分かる?お嬢ちゃんはこいつ達の言うことが分かるとでも言うのか?」
「うん。みんな、こまってるよ。」
人々の隙間から、ふわふわとした綺麗な銀髪が見えた。
「変な子ねぇ。」「本当に。」
「一体何処の家の子供だろうか。見たことないな。」
「さっきから訳の分からないことばっかり言ってるんだって。」
店長と少女の周りに群がる人々が小さな声で話している。
店長は眉根を寄せて、先程より少し口調を強くして言った。
「そんなこと信じられるか。もう向こうに行け。二度と来るな。」
店長は少女の華奢な肩を掴むと、無理やり後ろを向かせて、背中を強く押した。
「わっ。」
背中を押された少女は、突っ張ることもできずにそのまま前に倒れる。
その先にいた人々が、倒れる少女を咄嗟に避けて、少女は地面に転んだ。
1人だけが、人々の群れで少女が見えなかったため、避けることなく、少女の前に立ったままだった。
少女が顔を上げると、そこには金髪で薄い灰色の瞳の青年が立っていた。
見事な再開を果たした2人だが、反応は全く違った。
青年はやっぱりさっきの奴か、という微妙な顔をしていた。
少女は見知った顔に瞳を輝かせ、嬉しそうな顔をしていた。
「さっきの!」
元気に立ち上がった少女に、青年は顔を引きつらせた。
「何だ、お兄さんの知り合いか?」
やはり、店長と周りの人々からの注目を受けてしまい、青年はため息をついた。
「その子をどうにかしてくれ。」
店長のうんざりした声に、青年はうんざりしたいのはこっちだと思いながら、知り合いではないと言おうと口を開いた。
「ねぇ、この子たちも、こまってるよ。」
しかしそれよりも早く、少女が青年に話し掛けた。
少女は店のたくさんの鳥達を指差している。
その様子を見た店長は、少女と青年を少し睨みながら言った。
「早くどっかに連れていけ。」
全くの無関係なのに、今更言っても無駄らしい。
青年はまた一つため息をつくと、少女の腕を引っ張り、店から遠ざけるために歩き出した。
「こまってる、のに。」
少女は嫌がり抵抗するも、青年の手を振りほどくことも、突っ張って耐えることもできない。
青年に引っ張られるままに、鳥達からどんどん離れていかせれる。
少女の耳に、一羽の鳥の鳴き声が聞こえた。
「………やだ!」
少女は力を込めて掴まれた腕を振ったが、青年の手は離れなかった。
少女の目に、薄ら涙が浮かんできた。
鳥達と店がぼやけて、はっきりと見えなくなって、
とうとう、店は見えなくなってしまったのだった。
青年は1人で道を歩いていた。
「また会うかどうかも分からないのに。」
考えるのは、先程の奇妙な少女との出会い。
少女のとても綺麗な瞳が、嫌に頭に残っていた。
「…子供か。まだ何も知らない。」
これからあの綺麗な瞳も、下らない世界のせいで薄汚れて、光らなくなっていくんだろう。
それにしても、あんな何もない所に子供が1人なんて危険過ぎる。
「…ま、もう二度と関わることなんてないだろう。」
世界は広い。広過ぎて全てが下らない。
もうこの世界に、何か思うことも、思い残すことも、何もない。
汚れていく世界に、自分に、見て見ぬふりをしていく。
そう生きていくと、決めた。
「もう生きていけなくても、構わないけどな。」
人間いつかは死ぬのだから。
その時がやって来たときは、もう逆らったりしない。
今までは散々足掻いてきたその時を、今は淡々と待つだけなのだ。
「…綺麗な空だな。」
青過ぎる空が、世界にずっと広がっていた。
賑やかな町だった。
広い大通りにはたくさんの人がいる。
両端にはたくさんの店が並び、店主らしき人々が大声で道行く人々を呼び止める。
楽しそうに立ち話をする大人達や、真剣に買い物をする大人達。
大人の側で大人しくする子供達や、大人の隙間をはしゃぎながら走り抜ける子供達。
その中を1人の青年が歩いていた。
金色の髪と、薄い灰色の瞳をしている。
身体を長いコートで覆っていて、後ろから見ると短い金髪とコートと革靴しか見えない。
コートの袖に手を通すことはせず首の部分だけを止めて、コートをマントのように羽織っていた。
コートの下には鎧服を着ており、腰に長い剣を差していた。
小さな布鞄を背負うように持っているが、コートに隠れて後ろからは見えない。
先程、丘で1人寝転んでいて、突然少女に起こされて、またねと言われた青年だった。
「活気があって良い町だ。今日は此処に泊まろう。」
人々の笑顔を眺めながら、青年は宿を探すことにした。
宿を探して町を歩いていると、ある店の前に何やら人だかりができていた。
どうやら大変繁盛しているという訳ではなく、何か問題でもあったらしい。
青年に首を突っ込む気はなかったが、何となく近付いて話を伺ってみた。
「お嬢ちゃん、いい加減商売の邪魔だよ。買う気がないなら何処かに行ってくれ。」
その店にはたくさんの檻が並んでいた。
檻の大きさは大小様々だが、檻の中には色鮮やかな鳥達が一羽ずつ入れられていた。
どうやらこの辺りに生息する、色の綺麗な鳥達を捕まえて、ペットとして売っている店らしい。
「でも、みんな、こまってるよ。」
聞いたことのある言葉に、青年はぴくりと反応した。
「だから、何でお嬢ちゃんにそんなことが分かる?お嬢ちゃんはこいつ達の言うことが分かるとでも言うのか?」
「うん。みんな、こまってるよ。」
人々の隙間から、ふわふわとした綺麗な銀髪が見えた。
「変な子ねぇ。」「本当に。」
「一体何処の家の子供だろうか。見たことないな。」
「さっきから訳の分からないことばっかり言ってるんだって。」
店長と少女の周りに群がる人々が小さな声で話している。
店長は眉根を寄せて、先程より少し口調を強くして言った。
「そんなこと信じられるか。もう向こうに行け。二度と来るな。」
店長は少女の華奢な肩を掴むと、無理やり後ろを向かせて、背中を強く押した。
「わっ。」
背中を押された少女は、突っ張ることもできずにそのまま前に倒れる。
その先にいた人々が、倒れる少女を咄嗟に避けて、少女は地面に転んだ。
1人だけが、人々の群れで少女が見えなかったため、避けることなく、少女の前に立ったままだった。
少女が顔を上げると、そこには金髪で薄い灰色の瞳の青年が立っていた。
見事な再開を果たした2人だが、反応は全く違った。
青年はやっぱりさっきの奴か、という微妙な顔をしていた。
少女は見知った顔に瞳を輝かせ、嬉しそうな顔をしていた。
「さっきの!」
元気に立ち上がった少女に、青年は顔を引きつらせた。
「何だ、お兄さんの知り合いか?」
やはり、店長と周りの人々からの注目を受けてしまい、青年はため息をついた。
「その子をどうにかしてくれ。」
店長のうんざりした声に、青年はうんざりしたいのはこっちだと思いながら、知り合いではないと言おうと口を開いた。
「ねぇ、この子たちも、こまってるよ。」
しかしそれよりも早く、少女が青年に話し掛けた。
少女は店のたくさんの鳥達を指差している。
その様子を見た店長は、少女と青年を少し睨みながら言った。
「早くどっかに連れていけ。」
全くの無関係なのに、今更言っても無駄らしい。
青年はまた一つため息をつくと、少女の腕を引っ張り、店から遠ざけるために歩き出した。
「こまってる、のに。」
少女は嫌がり抵抗するも、青年の手を振りほどくことも、突っ張って耐えることもできない。
青年に引っ張られるままに、鳥達からどんどん離れていかせれる。
少女の耳に、一羽の鳥の鳴き声が聞こえた。
「………やだ!」
少女は力を込めて掴まれた腕を振ったが、青年の手は離れなかった。
少女の目に、薄ら涙が浮かんできた。
鳥達と店がぼやけて、はっきりと見えなくなって、
とうとう、店は見えなくなってしまったのだった。
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女性
自己紹介:
毎日のんびりマイペースに過ごす学生です。
ポケモン、APH、キノの旅、牧場物語、ゼルダの伝説など大好物増殖中。
基本的にキャラ単体萌え。かっこかわいい方に非常に弱い。女の子ならボーイッシュな子がクリティカルヒット。カプに関してはノマカプ萌えですがたまに腐るかもしれない。
現在6つのオリジナル小説を亀更新中。書きたいのいっぱいありすぎてどれも手が回ってない。
絶賛ポケ擬人化再熱中!!デザインが来い。
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