蔭日向。
気ままに落書きや小説を書いたり萌え語りしています。詳細は『復活しました!』という最古記事に。リンクからオリジナル小説、ポケ擬人化のまとめ記事に飛べます。
10DAY's Limit 7
- 2012/02/29 (Wed)
- novel |
- CM(0) |
- Edit |
- ▲Top
可愛い鳥のさえずりが聞こえる。もう朝か…。起きないと…。
「オラーーー!!!朝だぞ!!とっとと起きやがれ!!」
「わっ!」
一気に目が冴えてしまった。いきなり耳元で叫ぶなんて最悪な起こされ方だ。
「朝からうるさいだろ!」
「テメェがさっさと起きねぇからだろが!自業自得だな!」
「今起きようとしてたんだよ!」
朝から元気よく言い争いをしていると、部屋のドアがノックされた。
「レイ君と死神さん、おはよう。」
声で分かる。如月さんだ。
「朝ごはん出来たから食べて。下で待ってるからねー。」
階段を降りていく音が聞こえた。わざわざ作ってくれたのに待たせるなんていけない。早く降りなければ。………って、ちょっと待てよ。
「…なぁ、この身体でご飯って食べれるのか?」
「さぁな。やってみればいいだろが。」
「分からないのかよ!」
「俺は半幽霊状態の奴なんかと一緒に飯食ったことねぇからな。」
…食べれなかったらどうしよう。
下へ降りると、既にダイニングに美味しそうな朝食が3人分並べられていていた。
「口に合えば良いんだけど…。」
「なかなか美味そうじゃねーか。食べてやるよ。」
そう言うと死神は手掴みでパンを引き契って食べ始めた。
小さいままなので、パンは死神とおなじくらいの大きさがある。
机の上に胡坐をかいて、両手でパンを削っていくその様は、とてつもなく行儀が悪いのに、大きさのせいで可愛く見えてしまう。
「レイ君もどうぞ。」
「あ、あぁ、うん…。い、頂きます。」
恐る恐るスープを口に運んでみる。
「…………美味しい。」
「本当?良かった。」
た、食べれた…。良かった。幽霊ってご飯食べれるのか。そういえば天国には豪華なご馳走があるって聞くしな。…いや、俺は幽霊じゃないけど。
「ねぇ、今日はどうするの?」
如月さんは朝食を食べながら死神に聞いた。
「そーだな。この辺を適当にぶらついてみるか。こいつに何か変化あるかもしれねぇし。」
「じゃあ、私が案内してあげるよ。この町の中だけでいい?」
「そーだな。多分それでいいだろ。」
「分かった!とびきりの場所に連れていってあげるね。」
如月さんは随分俺に協力的だ。昨日も寝る前までたくさん話をした。
今はお盆休みも過ぎた8月の半ば。
如月さんの学校は今は夏休みらしいが、昨日は部活があったらしい。
引っ越して去年の春からこの町に住むことになり、両親は忙しい人なのでなかなか家にも帰って来ないとのこと。
だけど全然寂しくはないそうだ。見かけによらず強い子なんだな、と思った。
如月さんが一部の記憶を無くしたのはつい最近らしい。
気が付いたら病院にいて、でも軽傷で済んだのですぐに退院出来たそうだ。
何か大切なものを忘れている気がして、両親に尋ねてみたが曖昧にはぐらかされてしまったそうだ。
「でも、本当に本当に大切なことだった気がするの。絶対に思い出さないといけない気がするの。」
そう言った如月さんの辛そうな顔が、その後しばらく頭から離れなかった。
朝食の後、如月さんの案内で町を巡る。
同じような家が続く住宅路を行き、しばらくすると大きな学校の前を通る。
如月さんの通っている学校らしい。見た感じ、お嬢様学校って感じだけどそうでもないらしい。
この町に学校は此処しかなく、もしかしたらテメェもここに通ってたんじゃねーのかと死神に言われたが、何も思い出せなかった。
そもそも、俺は学生だったのだろうか。
学校を通り過ぎて、駅前の商店街へ。
いろんな店が並んでいて、夏休みということもあるのか、子供や学生らしい人が多かった。
死神は見るもの珍しいそうで、辺りをあっちこっちせわしなく浮遊していた。
俺は如月さん以外の人に見えてしまって騒がれたらどうしようと思ったが、全然見向きもされなかった。
幽霊の見える人なんてなかなかいないんだな。当たり前か。
如月さんはすいすいと商店街を抜けていく。
食品とかの買い物以外ではなかなか来ないそうで、あまり遊んだこともないそうだ。
如月さんに話し掛ける人は、誰もいなかった。
駅はあまり大きくない、路線4本くらいのものだった。
如月さんは歩くのが好きで、一駅くらいの距離ならば、なかなかバスや電車は利用しないらしい。
両親がたまに会社から離れて帰って来るような時は、如月さんが駅まで迎えに行って外食にでも行くんだそうだ。
親を待っている時によくお世話になっているんだよ、と如月さんは駅前の広場にあるベンチに座った。
勧められたので、俺も隣に座ってみた。駅全体が良く見えた。
踏切を渡ると、また住宅街。
でも駅近くなのでアパートが多い気がする。
犬の散歩をしていた人とすれ違ったとき、犬に吠えられた。
一瞬本気でびっくりした。動物は人間に見えないものが見えているって聞くけど、本当にそうだったのか。
死神がなんだようっせーな!と犬に怒り、もっと吠えられた。
如月さんが飼い主に謝られ、犬は叱られていたが、犬は全く悪くないと思った。
噴水のある綺麗な公園に着いたので、一休みすることにした。
小さな子供達が元気よく走り回るのをぼんやりと見ていた。
子供って霊感とか強いことがあるらしいが、全く気付かれない。
サッカーに夢中だったってこともあるのかもしれないけど。
「レイ君、楽しい?」
ふと、如月さんが横から顔を覗いてきた。ちょ、ちょっと顔が近い…。
「あ、あの、…うん。楽しいよ。」
「私も何だか凄く楽しいんだ。」
「そ、そっか…。それなら良いんだけど。わざわざ町案内なんて疲れるだろうし、申し訳ないなって思ってたから…。」
「私は全然大丈夫だよ。散歩好きだし。あとちょっと休憩したらまた歩こうね。」
如月さんは微笑んだ後、喉が渇いたとか言って水を飲みに行っていた死神の元へと走っていった。
俺は鼓動が少し速くなっていた心臓を落ち着ける為に、長く息を吐いた。その時。
「きゃああああああ!」
公園に高い悲鳴が響き渡った。
「オラーーー!!!朝だぞ!!とっとと起きやがれ!!」
「わっ!」
一気に目が冴えてしまった。いきなり耳元で叫ぶなんて最悪な起こされ方だ。
「朝からうるさいだろ!」
「テメェがさっさと起きねぇからだろが!自業自得だな!」
「今起きようとしてたんだよ!」
朝から元気よく言い争いをしていると、部屋のドアがノックされた。
「レイ君と死神さん、おはよう。」
声で分かる。如月さんだ。
「朝ごはん出来たから食べて。下で待ってるからねー。」
階段を降りていく音が聞こえた。わざわざ作ってくれたのに待たせるなんていけない。早く降りなければ。………って、ちょっと待てよ。
「…なぁ、この身体でご飯って食べれるのか?」
「さぁな。やってみればいいだろが。」
「分からないのかよ!」
「俺は半幽霊状態の奴なんかと一緒に飯食ったことねぇからな。」
…食べれなかったらどうしよう。
下へ降りると、既にダイニングに美味しそうな朝食が3人分並べられていていた。
「口に合えば良いんだけど…。」
「なかなか美味そうじゃねーか。食べてやるよ。」
そう言うと死神は手掴みでパンを引き契って食べ始めた。
小さいままなので、パンは死神とおなじくらいの大きさがある。
机の上に胡坐をかいて、両手でパンを削っていくその様は、とてつもなく行儀が悪いのに、大きさのせいで可愛く見えてしまう。
「レイ君もどうぞ。」
「あ、あぁ、うん…。い、頂きます。」
恐る恐るスープを口に運んでみる。
「…………美味しい。」
「本当?良かった。」
た、食べれた…。良かった。幽霊ってご飯食べれるのか。そういえば天国には豪華なご馳走があるって聞くしな。…いや、俺は幽霊じゃないけど。
「ねぇ、今日はどうするの?」
如月さんは朝食を食べながら死神に聞いた。
「そーだな。この辺を適当にぶらついてみるか。こいつに何か変化あるかもしれねぇし。」
「じゃあ、私が案内してあげるよ。この町の中だけでいい?」
「そーだな。多分それでいいだろ。」
「分かった!とびきりの場所に連れていってあげるね。」
如月さんは随分俺に協力的だ。昨日も寝る前までたくさん話をした。
今はお盆休みも過ぎた8月の半ば。
如月さんの学校は今は夏休みらしいが、昨日は部活があったらしい。
引っ越して去年の春からこの町に住むことになり、両親は忙しい人なのでなかなか家にも帰って来ないとのこと。
だけど全然寂しくはないそうだ。見かけによらず強い子なんだな、と思った。
如月さんが一部の記憶を無くしたのはつい最近らしい。
気が付いたら病院にいて、でも軽傷で済んだのですぐに退院出来たそうだ。
何か大切なものを忘れている気がして、両親に尋ねてみたが曖昧にはぐらかされてしまったそうだ。
「でも、本当に本当に大切なことだった気がするの。絶対に思い出さないといけない気がするの。」
そう言った如月さんの辛そうな顔が、その後しばらく頭から離れなかった。
朝食の後、如月さんの案内で町を巡る。
同じような家が続く住宅路を行き、しばらくすると大きな学校の前を通る。
如月さんの通っている学校らしい。見た感じ、お嬢様学校って感じだけどそうでもないらしい。
この町に学校は此処しかなく、もしかしたらテメェもここに通ってたんじゃねーのかと死神に言われたが、何も思い出せなかった。
そもそも、俺は学生だったのだろうか。
学校を通り過ぎて、駅前の商店街へ。
いろんな店が並んでいて、夏休みということもあるのか、子供や学生らしい人が多かった。
死神は見るもの珍しいそうで、辺りをあっちこっちせわしなく浮遊していた。
俺は如月さん以外の人に見えてしまって騒がれたらどうしようと思ったが、全然見向きもされなかった。
幽霊の見える人なんてなかなかいないんだな。当たり前か。
如月さんはすいすいと商店街を抜けていく。
食品とかの買い物以外ではなかなか来ないそうで、あまり遊んだこともないそうだ。
如月さんに話し掛ける人は、誰もいなかった。
駅はあまり大きくない、路線4本くらいのものだった。
如月さんは歩くのが好きで、一駅くらいの距離ならば、なかなかバスや電車は利用しないらしい。
両親がたまに会社から離れて帰って来るような時は、如月さんが駅まで迎えに行って外食にでも行くんだそうだ。
親を待っている時によくお世話になっているんだよ、と如月さんは駅前の広場にあるベンチに座った。
勧められたので、俺も隣に座ってみた。駅全体が良く見えた。
踏切を渡ると、また住宅街。
でも駅近くなのでアパートが多い気がする。
犬の散歩をしていた人とすれ違ったとき、犬に吠えられた。
一瞬本気でびっくりした。動物は人間に見えないものが見えているって聞くけど、本当にそうだったのか。
死神がなんだようっせーな!と犬に怒り、もっと吠えられた。
如月さんが飼い主に謝られ、犬は叱られていたが、犬は全く悪くないと思った。
噴水のある綺麗な公園に着いたので、一休みすることにした。
小さな子供達が元気よく走り回るのをぼんやりと見ていた。
子供って霊感とか強いことがあるらしいが、全く気付かれない。
サッカーに夢中だったってこともあるのかもしれないけど。
「レイ君、楽しい?」
ふと、如月さんが横から顔を覗いてきた。ちょ、ちょっと顔が近い…。
「あ、あの、…うん。楽しいよ。」
「私も何だか凄く楽しいんだ。」
「そ、そっか…。それなら良いんだけど。わざわざ町案内なんて疲れるだろうし、申し訳ないなって思ってたから…。」
「私は全然大丈夫だよ。散歩好きだし。あとちょっと休憩したらまた歩こうね。」
如月さんは微笑んだ後、喉が渇いたとか言って水を飲みに行っていた死神の元へと走っていった。
俺は鼓動が少し速くなっていた心臓を落ち着ける為に、長く息を吐いた。その時。
「きゃああああああ!」
公園に高い悲鳴が響き渡った。
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ラビット・アドベンチャー 2
- 2012/02/28 (Tue)
- novel |
- CM(0) |
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- ▲Top
暖かい光を浴びて輝く、緑一色の大地。
たまに心地よい風が大地に吹けば、
足首までの短い草が揺れ、緑の波が生まれる。
ぽつぽつと立っている木が波の形を少しだけ歪め、
大地に不定形な波を作り出す。
その様は、まるで緑の海のようだった。
波が通り過ぎた木の下に、2人の少年が立っていた。
2人はTシャツの色以外全く同じ格好をしている。
「次はあの木だ。」
かろうじて見える木を右手で指差しながら、白いTシャツを着た少年が言った。
「はぁ…。」
黒いTシャツを着た少年は、疲れたようにため息をついた。
「木を目印にしなきゃまともに進めないとは思ってたけど…。こんなに面倒だとは思ってなかったぜ…」
「仕方ないさ。広い草原で方向が分からなくなったら終わりだよ」
「わかってるよそんなこと。だけど、やっぱ面倒だろ?」
「…面倒だけど仕方ないさ。出発したばかりで面倒面倒言ってたらこれ以上進めないよ。」
「そうだけど…。面倒なものを面倒って言うのは当然だろ?あの木に着いたら次の木を見つけて、次の木に着いたらまた次の木を見つけて…。あー…面倒だ」
「…だから、面倒だけど、仕方ないさ。」
進歩のない会話をしながら、2人は延々と続く果てしない草原をゆっくり慎重に進んでいた。
やがて、2人の目の前に草以外の風景が映った。
「あ、川だ。」
「やれやれ…。ちょっと休もうぜ。」
「そうだね。後は川沿いに行けば森に着けるだろうし。」
「何か精神削られるな…。ホントにこの草原はただただ広いだけだよなー。動物もいないし、変わった物も無いし。」
卯月は右手に持っていたコンパスをリュックにしまった。
「『迷いの草原』って言われるだけあるってことさ。」
2人がいる草原は、島の住民から『迷いの草原』と呼ばれている。
そこは、足首までの草と青い空がただただ続く世界。
そのうち方角が分からなくなり、草原から抜け出すことが出来なくなってしまう。
ぽつぽつと生える木は万が一、迷い込んでしまったときの唯一の道しるべ。
しかしその道が何処へ通じているのかは、誰にも分からない。
そんな草原を2人が突破しなければいけないのには訳がある。
「これで誰にもばれずに森まで行けるんだな!」
「いくら朝早くたって、誰かに会えば新菜に伝わるかもしれないからな…。」
2人が目指す森はこの草原を越えずとも、大きく迂回すれば辿り着ける。
島の住民達が草原に入らない為に作られた、普通の道があるからだ。
しかし2人は島の住民達に見られるのを避ける為、
真っ直ぐ草原を突っ切って進んで来たのだった。
「…何か女1人の為にここまでする俺らってダサくね?」
「え?そうかな…。」
「だって何しても何処行っても、心配させないってくらいの方が格好いいだろ。」
「………………。」
「それほど強いって言うか、頼れるって言うか…。」
「黒兎、それ以上言わないで………。」
黒兎が卯月を見ると、卯月は体操座りをして頭を抱えていた。
「………本気でへこむなよ…。」
その後何とか気を奮い足せ、2人は川沿いを森へと向かい歩き出すのだった。
ちょうどその頃。
卯月の家に1人の少女がやって来た。
「卯月ー。おはよー。」
白いワンピースの上に、薄い橙色のエプロンを着けている。
その手には大きめのバスケットが握られていた。
背中まである長く黒い髪。
頭の横には大きな赤いリボン。
大きな瞳は綺麗な桃色をしている。
「卯月ー?いないの?」
少女はドアノブを回してみるが、鍵が掛かっていてドアは開かなかった。
「朝早くから何処行ったんだろう…。」
残念そうに肩を落とし、バスケットに被せてあった赤いチェック柄の布を捲る。
バスケットの中には焼きたてでまだ少し熱を持った、美味しそうなパンが入っていた。
「…勿体ないから黒兎にあげにいこう!」
布を元に戻し、少女は黒兎の家へと駆け出した。
たまに心地よい風が大地に吹けば、
足首までの短い草が揺れ、緑の波が生まれる。
ぽつぽつと立っている木が波の形を少しだけ歪め、
大地に不定形な波を作り出す。
その様は、まるで緑の海のようだった。
波が通り過ぎた木の下に、2人の少年が立っていた。
2人はTシャツの色以外全く同じ格好をしている。
「次はあの木だ。」
かろうじて見える木を右手で指差しながら、白いTシャツを着た少年が言った。
「はぁ…。」
黒いTシャツを着た少年は、疲れたようにため息をついた。
「木を目印にしなきゃまともに進めないとは思ってたけど…。こんなに面倒だとは思ってなかったぜ…」
「仕方ないさ。広い草原で方向が分からなくなったら終わりだよ」
「わかってるよそんなこと。だけど、やっぱ面倒だろ?」
「…面倒だけど仕方ないさ。出発したばかりで面倒面倒言ってたらこれ以上進めないよ。」
「そうだけど…。面倒なものを面倒って言うのは当然だろ?あの木に着いたら次の木を見つけて、次の木に着いたらまた次の木を見つけて…。あー…面倒だ」
「…だから、面倒だけど、仕方ないさ。」
進歩のない会話をしながら、2人は延々と続く果てしない草原をゆっくり慎重に進んでいた。
やがて、2人の目の前に草以外の風景が映った。
「あ、川だ。」
「やれやれ…。ちょっと休もうぜ。」
「そうだね。後は川沿いに行けば森に着けるだろうし。」
「何か精神削られるな…。ホントにこの草原はただただ広いだけだよなー。動物もいないし、変わった物も無いし。」
卯月は右手に持っていたコンパスをリュックにしまった。
「『迷いの草原』って言われるだけあるってことさ。」
2人がいる草原は、島の住民から『迷いの草原』と呼ばれている。
そこは、足首までの草と青い空がただただ続く世界。
そのうち方角が分からなくなり、草原から抜け出すことが出来なくなってしまう。
ぽつぽつと生える木は万が一、迷い込んでしまったときの唯一の道しるべ。
しかしその道が何処へ通じているのかは、誰にも分からない。
そんな草原を2人が突破しなければいけないのには訳がある。
「これで誰にもばれずに森まで行けるんだな!」
「いくら朝早くたって、誰かに会えば新菜に伝わるかもしれないからな…。」
2人が目指す森はこの草原を越えずとも、大きく迂回すれば辿り着ける。
島の住民達が草原に入らない為に作られた、普通の道があるからだ。
しかし2人は島の住民達に見られるのを避ける為、
真っ直ぐ草原を突っ切って進んで来たのだった。
「…何か女1人の為にここまでする俺らってダサくね?」
「え?そうかな…。」
「だって何しても何処行っても、心配させないってくらいの方が格好いいだろ。」
「………………。」
「それほど強いって言うか、頼れるって言うか…。」
「黒兎、それ以上言わないで………。」
黒兎が卯月を見ると、卯月は体操座りをして頭を抱えていた。
「………本気でへこむなよ…。」
その後何とか気を奮い足せ、2人は川沿いを森へと向かい歩き出すのだった。
ちょうどその頃。
卯月の家に1人の少女がやって来た。
「卯月ー。おはよー。」
白いワンピースの上に、薄い橙色のエプロンを着けている。
その手には大きめのバスケットが握られていた。
背中まである長く黒い髪。
頭の横には大きな赤いリボン。
大きな瞳は綺麗な桃色をしている。
「卯月ー?いないの?」
少女はドアノブを回してみるが、鍵が掛かっていてドアは開かなかった。
「朝早くから何処行ったんだろう…。」
残念そうに肩を落とし、バスケットに被せてあった赤いチェック柄の布を捲る。
バスケットの中には焼きたてでまだ少し熱を持った、美味しそうなパンが入っていた。
「…勿体ないから黒兎にあげにいこう!」
布を元に戻し、少女は黒兎の家へと駆け出した。
10DAY's Limit 6
- 2012/02/27 (Mon)
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「なぁ、それ学校の制服だろ?学校行く途中とかじゃなかったの?大丈夫?」
俺は如月さんが着ている服を見ながら尋ねた。声をかけてくれたのに色々驚いていたせいで、今まで気が回らなかった。結構話し込んでしまったけど、遅刻寸前だったりしないだろうか。
「大丈夫だよ。本当は登校日で学校に行くはずだったけど…。」
「いや、それ大丈夫じゃないじゃん!遅刻じゃん!」
「もう今日は行く気がしないから。」
「サボりかぁ?可愛い顔して以外とやるじゃねぇか。お前、食われても知らねぇぞ。」
「あー、こいつは無視していいから。」
「んだと、やんのかコラァ!」
耳元でうるさく騒ぐ死神と睨み合っていたら、如月さんが嬉しそうに笑った。
「だって、素敵な出会いをしちゃったんだもん。」
その、誰が見ても可憐な笑顔に、思わず見とれてしまう。
こんな可愛い子といて、俺は真面目に自分の記憶を取り戻すことは出来るのだろうか。
「あ、そうだ。幽霊さんは…。」
如月さんは俺に何かを言いかけて、うーん…と何か考え始めた。
「幽霊さん…じゃ呼びにくいね。何て呼んだらいいかな?」
可愛らしく首を少しだけ傾けて聞いてきたが、俺は自分の名前を覚えていないので返答に詰まった。しかし、死んでもいないので幽霊と呼ばれ続けるのも何か嫌だ。
「如月さんの好きに呼んでいいよ。」
「本当?じゃあ…レイ君で。」
ふふふ、と嬉しそうに笑っている如月さんには悪いが、何だろう…違和感がする。俺の本当の名前ではないからか…?そうなんだろうな。
「レイ君の友達?私、こんなに小さな幽霊さんは初めて見たよ。」
「だから、俺は幽霊じゃねぇ!!!ついでにコイツの友達でもねぇ!!!」
俺は顔をしかめる。耳元で叫ばないで欲しい。あと、俺だってお前なんかと友達になりたくないし。
「俺は死神だ。」
死神はへへん、と何か偉そうに自己紹介をした。って、それバラしちゃうのか。大丈夫なのかよ、おい。如月さんきょとんとしてるし。
「俺はコイツが記憶を取り戻すか、タイムアップで死ぬかしないと仕事終わんねぇ。ここで知り合ったのも何かの縁だろ。俺のために協力して貰うぞ。」
コイツペラペラとなんてことを。
果てしなくムカついたので、肩にいる死神をつまみ上げてみた。
「何すんだてめぇ!!」
じたばたと暴れ出した死神。ざまーみろ。偉そうな態度とってるからだ。
「死神って本当にいるんだね。」
「当たり前だろ。俺達がいなかったらあの世はめちゃめちゃだぜぇ?」
俺に摘まれたままの死神がぐるりと振り向いて俺を見た。上目使いだがちっとも可愛くない。
「お前も俺が居なかったらあのまま永遠に彷徨ってただろーなぁ。感謝するんだなぁ。」
「………アリガトウ。」
果てしなくムカついたが取り敢えず礼を言った。超棒読みだけど、礼を言うだけでも俺は寛大な奴だ。別にナルシストではない。
そんな俺達を見て如月さんはクスクス笑った。
「ねぇ、2人ともこれからどうするの?」
「うーん…。どうするって言われてもなぁ…。」
記憶なんてぽんぽん簡単に思い出せるものじゃないだろう。何かよくある小説とか映画でも、なかなか思い出せなくてやきもきするし。
「死んだ場所に来ても思い出せねぇし、運良く人に会っても思い出せねぇし、もう打つ手ねぇよ。」
さっきまでイケイケだった死神も諦めモードだ。
依然として俺に摘まれたままの死神は如月さんの方を向きなおした。
「つーか、疲れた。お前の家に連れてけ。休ませろ。」
死神にも疲れってあるんだ。…ってそうじゃなくて!
「何言ってんだよ!如月さんに迷惑かけるな!」
「じゃあさっさとてめぇの家でも思い出せ!それとも、俺にその辺の外で寝ろって言うのかぁ!?」
「お前何様だよ!さっき会った人の家に行こうなんて図々しいにも程があるだろ!」
「私は別にいいよ。」
「ええ!?」
「レイ君と死神さんに協力するって決めたしね。」
何なんだ。如月さんっていい人過ぎるだろう。可愛くて性格もいいなんて無敵じゃないか。
「あ…ありがとう。」
「どういたしまして!私の家はこっちだよ。」
そう言って歩き出した如月さんに憑いて…じゃない、ついて行こうとしたら死神が再び俺を見上げた。
「おい!てめぇ、いい加減離せ!!」
「此処だよ。」
「ふーん。割とデカイし綺麗な家じゃねぇか。悪くねぇな。」
「ありがとう。どうぞ上がって。」
「お邪魔するぜー。」
「………レイ君?どうしたの?」
俺は如月さんに呼び掛けられて、はっとした。
「ああ!ごめん。…お邪魔します。」
何だろう。この感じ。
俺はこの家見たことあるような気がする。
住宅街だし、似たような家は他にもたくさんあるのに。
如月さんの家だけ、何だか特別な存在に見えた。
「去年からお兄ちゃんが一人暮らし始めたから部屋も空いてるよ。ちょっと片付けて来るから、そこ自由に使っていいからね。」
「何かごめんな…。いろいろ。」
「大丈夫だよ。レイ君もゆっくりしてていいからね。」
如月さんはリビングを手で示すと二階へと階段を上がっていった。
玄関で靴を脱ぐべきかちょっと迷ったが、一応脱いで手に持っておくことにした。
リビングへ入ると既に、死神が大きなソファーの上をごろごろ転がっていた。
その様子に呆れるのと、何だか今までの訳の分からないことに疲れたのも合わさって、俺は大きなため息をついたのだった。
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日蔭
性別:
女性
自己紹介:
毎日のんびりマイペースに過ごす学生です。
ポケモン、APH、キノの旅、牧場物語、ゼルダの伝説など大好物増殖中。
基本的にキャラ単体萌え。かっこかわいい方に非常に弱い。女の子ならボーイッシュな子がクリティカルヒット。カプに関してはノマカプ萌えですがたまに腐るかもしれない。
現在6つのオリジナル小説を亀更新中。書きたいのいっぱいありすぎてどれも手が回ってない。
絶賛ポケ擬人化再熱中!!デザインが来い。
ポケモン、APH、キノの旅、牧場物語、ゼルダの伝説など大好物増殖中。
基本的にキャラ単体萌え。かっこかわいい方に非常に弱い。女の子ならボーイッシュな子がクリティカルヒット。カプに関してはノマカプ萌えですがたまに腐るかもしれない。
現在6つのオリジナル小説を亀更新中。書きたいのいっぱいありすぎてどれも手が回ってない。
絶賛ポケ擬人化再熱中!!デザインが来い。